過酷な条件で使われる業務用の食器でも、木固め加工をしていれば安心できます。 (有城利博さん/ありしろ道具店代表)

有城利博さん

有城利博さんは、静岡県伊豆市に工房を構える木工家。10年来のプレポリマー愛用者で、旅館や飲食店で使う業務用の木器を日々製作しています。材料に使うのは地元の間伐材や伐採された街路樹が中心。そんな有城さんにプレポリマーを使い続けている理由をお聞きしました。

Q.家具から木の器作りに転向されたそうですね。

伊豆に引っ越す前は、新潟の家具工場で働いていました。私は料理が好きで、家具だけでなくて、木の器も作りたいとずっと思っていました。たまたま、木工家の時松辰夫先生が指導していた木工所(NPO法人伊豆森林夢巧房研究所・現在は解散)が研修生を募集しているとを知りました。ちょうど30歳のときです。

研修期間は2年間。その間は無給です。研修費用の援助も一切なしという厳しい条件でしたが、木工ろくろの名人に師事できるまたとない機会ですし、木の器を作る技術を習得すれば、地域の木材を活用できると思って、移住を決意しました。

研修所に入ってからは、月に1回、先生がやってきて集中的に指導をしてもらい、それ以外の時間は、朝から晩までひたすら販売用の商品を作って腕を磨く、という日々を過ごしました。研修生は多いときで7,8人いました。研修所には宿舎があって、交代で料理当番をすることで食と器の関係も学ぶことができました。

NPO法人は残念ながら2011年に解散したのですが、研修所の卒業生3人で建物を借り受け、木工の仕事を続けることにしたんです。

汁椀の木地の製作工程
汁椀の木地の製作工程。荒削りした木地を十分に乾燥させてからろくろにかける。

Q.どんな木を使って器を作っているのですか。

自分たちで間伐した地元の木材や、伐採された街路樹を使っています。材木店から購入することは少ないですね。間伐材で多いのはヒノキやスギ、街路樹はサクラが多いですかね。商品として流通している木材ではないので、節やヒビもたくさん入っています。でも時松先生の「木は平等」という考えに共感して、銘木や大径木ではなく、地元にある身近な木材で器を作っています。

木の器を作るようになって木工の世界がずいぶんと広がりました。農家やシェフの方と一緒に商品開発したり……。そうそう、いまは地元のお寺さんの依頼で白木の応量器を作っているんですよ。座禅体験会の後にふるまう精進料理の器として使うそうです。

制作の様子
ろくろを回しながらカンナで削る。器の内側と外側を交互に挽いていく。

Q.プレポリマーの木固め効果は実感していますか。

私が作っている木の器は、地元の旅館や飲食店で使われるものがほとんどです。食洗機の熱湯や強力な洗剤で洗われることも多いので、木固め加工とウレタン塗装はどうしても欠かせません。

プレポリマーは木の狂いを未然に防ぐためのもので、目に見える効果があるわけではありません。とはいえ過去に納入した業務用の木の器が反ったり、自然に割れたりして返品されたことはほとんどないので、それなりに効いていると思います。もちろん、木地の段階で十分に乾燥させてゆがみを取り除くことが大前提ですが。

仕上げ塗りの工程
仕上げ塗りの工程。エステロンカスタムDX・全艶消をスプレーで塗装している。

Q.さしつかえなければ、塗装の仕様を教えてください。

プレポリマーは1000番(PS No.1000)を、中塗りにはエステロンカスタムDX・クリヤーを、仕上げ塗りにエステロンカスタムDX・全艶消を使っています。仕上げにはエステロンの7分消しを以前使っていましたが、最近は自然な仕上がりを好むお客さんがふえて、私自身も過剰な光沢が好きでないので、艶消しタイプに切り替えました。

目止め剤は費用対効果を考えて現在は割愛しています。木地を十分に乾燥させ、プレポリマーとエステロンで適切に塗装をすれば、十分な強力な塗膜を得られると思いますよ。

余談ですが、最近は拭き漆にも挑戦しています。それでわかったのですが、プレポリマーの塗装工程は漆器によく似ているんです。メーカーの寿化工は漆精製からはじまった会社だと時松先生から聞きました。なるほどなと思いました。一般的なウレタン塗装に比べると、プレポリマーによる木固め加工は手間がかかりますが、人工の漆と思えば納得がいきます。

白木の応量器
地元のお寺さんに依頼された白木の応量器。三つ組で入れ子収納が可能。

Q.プレポリマー初心者へアドバイスをお願いします。

気をつけたいのは臭いですね。汁椀やコーヒーカップなど熱いものを入れる器は、乾燥が不十分だと、お客さまが使った際にシンナー臭が発生することがあります。シンナー臭に関しては、納期に余裕をみることが一番の対策です。細かいことですが、エステロンカスタムの全ツヤ消しで仕上げるときは、缶をよく振ってから主剤と硬化剤を調合しないと、思うような仕上がりにならないので、注意が必要です。

白木の応量器
工房をシェアしている仲間2人と。右が松本克也さん、中央が菊池奈美さん。

有城利博さん Profile
有城利博(ありしろ・としひろ)◎木工家。1974年福井県生まれ。東北大学文学部卒業後、新潟県で家具製作に従事。2005年に伊豆へ移住。NPO法人伊豆森林夢巧房研究所で、木工家・時松辰夫氏に木の器作りの手ほどきを受ける。2011年にありしろ道具店を設立。地元の旅館や飲食店向けに業務用の食器やテーブルウェアの製作を行う。 ブログ:http://aridougu.exblog.jp/